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『Le të mësojmë KËNGËT』(歌を習おう)

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  今までは日本の戦前の本を中心に紹介をしてきましまが、いきなり趣が変わって、こちらは戦後の外国の本です。 何かというと、1969年にアルバニア人民共和国(その後、アルバニア社会主義人民共和国を経て、現在はアルバニア共和国)の首都ティラナのNAIM FRASHËRI出版社、NISH印刷所より出版された、小学1〜4年生向けの音楽の本、全て楽譜付きで、全156ページです。 発行部数は4000部、価格は2.50レク。現在のレートは1レク=1.66円なので、あり得ない低価格になりますが、当時のレートがどの程度なのかは分かりませんでした。 社会主義アルバニアといえば無神国家や鎖国などで知られていますが、日本共産党(左派)や劇団はぐるま座との関係も有名です。 こちらもいずれ取り上げようと思っていますが、劇団はぐるま座は革命歌の歌集やカセットテープなどを出版しており、その中にはアルバニアの歌曲も含まれています。 私はアルバニア語は一切分からないので、アプリを使って翻訳をしました。 「PARTISË」を訳すと「パーティー」となりますが、これを「党」と置き換えるなど、それっぽくはしてみましたが、どうしても翻訳しきれない部分や変な日本語、意味不明なところも多数あります。 社会主義国の子どもたちへの音楽教育の実態がタイトルからだけでも窺えるので、その翻訳結果を書き出してみます。 1年生の歌 ・党 ・党が大好きです ・祖国 ・パルチザンは戦争に行くつもりだった ・今日、学校が開校します ・学校の鐘 ・わたしは7さい ・ああ、小さなパルチザン ・5月 ・私の国の春 ・私たちの学校 ・私の母! ・2人の小さな子どもたち ・新年おめでとうございます ・仔羊たち ・冬 ・先生おめでとうございます ・ふるさと ・ファトシと仔羊 2年生の歌 ・党と共に ・エンヴェルおじさん ・親愛なる母なるアルバニアよ! ・祖国のために ・小さなパルチザン ・11月29日 ・パルチザンの炎 ・楽しい春をお家で! ・私たちの学校 ・本・ツルハシ・ライフル ・先生方、おめでとうございます ・両親 ・新年がやってきました ・私のバンガ! ・体操 ・美しい鳥! ・つばめたち ・蝶と蜂 ・春 3年生の歌 ・母の党 ・赤いスカーフ ・アルバニアの国旗 ・開拓者の泉! ・購入が補償される山 ・私は開拓者です ・党の花 ・今...

『禁止せられたる社会主義宣伝歌(大正十二年以降)』

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  どこの誰がいつ作ったものか(もちろん戦前の権力側には違いありませんが)、手掛かりがなにもない、表紙・裏表紙含めて30ページの冊子です。 薄い紙をホッチキスひとつで留めただけの、簡易な作りとなっています。 『禁止せられたる社会主義宣伝歌』というタイトルは、以前に紹介した 『自大正七年至昭和三年』 と同じですが、こちらは大正12年以降のものに限られています。 曲目は以下の通りです。 (下線) は歌い出し部分です。 ・革命歌 (嗚呼革命は近づけり) ・鐘ヶ淵紡績女工の歌 (あれ見よゝたらりゝ) ・農村革命の歌 (無智と笑はれさげすまれ) ・革命歌 (赤旗一度破れば) ・労働歌 (白虹天を貫ぬきて) ・労働歌 (ドンランアクナキ資本家ノ) ・ブチコロセ (いざやっ付けろ喰ひ付け) ・赤旗の歌 (民衆の旗赤旗は) ・革命安来節 (春が来やうが 冬寒むからうが) ・水平歌 (あゝ解放の旗高く) ・悲しみの深き日よ (東雲のあけぬまに) ・ヤツ付ケロ節 (弱者ノ血肉ヲ吸ヒ取リテ) ・分からない歌 (あゝ分らない分らない) ・ロードウ運動(モモタロー歌) (モモカラウマレタモゝタロー) ・もしゝかめよの歌 (もしゝかめよかめこうよ) ・ラッパ節 (貴婦人の頭に光るは) ・復讐の歌 (亀戸の森の夜は更けて) ・宣傳歌 (小作百姓の戦術を) ・労農党宣伝歌 (一致団結赤旗立て) ・労農ロシア (都の真中千代田の森に) ・告別の歌 (噫々我が愛する同胞よ) ・朝鮮革命歌(邦訳) (吾等は何時まで屈するや) ・黒殺の歌 (復讐の剣胸に秘め) ・宣傳歌(ワシントンの譜) (黒旗高く打ち振って) ・弾圧の斧(赤旗ノ節) (弾圧の斧ひらめきて) ・東京青年同盟の歌 (同志よ固く結べ) ・復讐の唄 (二八の日恨みの日) ・「テロリスト」の唄 (我等は宥さす無産者の) 『禁止せられたる社会主義宣伝歌(自大正七年至昭和三年)』と被っているものが多くあり、「朝鮮革命歌」や「黒殺の歌」など、この2冊でしか確認出来ない歌が多数あります。 そして、この『大正十二年以降』版にのみ載っているものがあり、『日本の革命歌』にも未掲載であり、新発見と思われるので紹介しておきます。 「ヤツ付ケロ節」(大正十二年五月十二日禁止) 弱者ノ血肉ヲ吸ヒ取リテ ソシテ贅沢サラス奴 彼奴此奴ノ容赦ナク 片ツ端カラヤツ付ケ...

『戦斗的無神論者』

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『戦斗的無神論者』1931年10・11月号 発行 1931年11月6日 発行所 日本戦闘的無神論者同盟 価格 10銭 1930年代初頭に、プロレタリア文化連盟の一員として活動していた団体の、極めて珍しい雑誌です。 こちらに歌が2つ掲載されており、『日本の革命歌』にも収録されていないので紹介をします。 「女工の歌」と「農民の歌」であり、『日本の革命歌』の女工・農民運動それぞれの貢を見ても、類似したものもありません。 この文章を寄せた徳永鐵なる人物がどこの誰なのか、ハッキリしたことが分からず、唯一の手掛かりになりそうな「丸東工場」についても不明です。 当時の革命歌・労働歌などは、書かれたものとしては残っていますが、実際に当時の人たちの口から歌われていたのか、やや疑問に思われるものもありますが、このような、作り歌い広めた具体的な方法が残っているのは貴重です。 なお、極めて珍しい雑誌ですが、手元に1932年5月号と、前身の反宗教闘争同盟準備会による『反宗教斗争』創刊号(1931年6月15日発行)があり、また、国立国会図書館にも『戦斗的無神論者』1931年12月号があり、中を確認しましたが、歌についての記述はありませんでした。

『9.18』

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  編集 黒川利夫 印刷 1932年9月18日 発行 1932年9月23日 発行所 仙台市南光院丁5 無産者法律相談所内 日本プロレタリア文化連盟宮城地方協議会 各ページの紙の質もサイズもバラバラな、粗悪なプロレタリア文化系の作品を集めたパンフレットです。どこまでがタイトルなのか、「1932.9」を含めるのかは判りません。 宮城前衛劇団文芸部の北霊三による「シュプレッヒコール 九月十八日は近づいた」という作品が掲載されており、「九月十八日こそは労働者、農民、失業者、お俺達が一緒になって帝✕主義戦争に●対する日だ」(要約)とあり、9.18というのは、おそらく前年の1931年9月18日の満州事変のことを指していると思われます。 北霊三については情報がなく、どういう人物かは判りませんでした。 このなかに、日本プロレタリア音楽家同盟仙台支ブ準備会による曲が2つ紹介されており、1つが今日でもよく知られている「自由のロシヤの讃歌」で、もう1つが「ナニヲヤロ」です。この「ナニヲヤロ」は、『日本の革命歌』や、当時の子供向けの革命歌が紹介されている『小さい同志』や『赤い旗』、『少年戦旗』、『プロレタリア童謡講話』などにも掲載されておらず、新たな発見と思われます。 カタカナばかりで読みにくいので書き起こしておきます。 「何をやろ」 地主のハゲさん 何をやろ ツクシを摘んだら ハカマやろ タケノコむいたら 皮をやろ トーキビもいだら ヒゲをやろ 栗の実 拾たら トゲをやろ なんにもないときゃ ゲンコやろ 「自由のロシヤの讃歌」もこれと同じく日本プロレタリア音楽家同盟仙台支部準備会(こちらの「部」は漢字)によりますが、仙台支部が作った曲ではないと思われます(根拠はありません)。「ナニヲヤロ」の方はトウモロコシのことを東北・北海道方言のトーキビと呼んでいて、あるいは仙台支部が作ったものかもしれません。

『プロレタリア音楽大会』ポスター

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  日本プロレタリア音楽家同盟大阪支部主催のプロレタリア音楽大会のポスターです。 縦14.9cm×横8.4cmと手のひらサイズで、ポスターなのか伝単・ビラ・チラシなのかは判然としません。 音楽同盟の機関紙『音楽新聞』第三號(昭和7年4月30日)にこの大会についての記事が掲載されていることから、1932年のものと分かります。 音楽会としての開催が認められず、「プロレタリア音楽についての座談会」に変更をし、なにも演奏が出来なかったようです。 さらに記事の最後に「六月の大音楽會を期待して呉れ」とありますが、『音楽新聞』第五號(昭和7年8月1日)によると、大阪支部第二回音楽會を7月3日に開催する予定で準備を進めていた最中の6月20日に同盟員4名の検束があり、音楽会のためのポスターやビラ、楽譜、資料、壁新聞を押収され、延期を余儀なくされました。 合法なプロレタリア文化運動であっても、如何に活動を抑えられていたかが分かります。 この延期後の大会が行われたかどうかは、手持ちの資料で調べましたが分かりませんでした。

日本青年共産同盟京都地方委員会編集『プロレタリヤ歌曲集』

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  これまで紹介してきた本は戦前のものでしたが、これは戦後のものです。奥付がなく発行年は不明ですが、日本青年共産同盟が存在していたのが1946年から1949年なので、その間のものということになります(ちなみに、日本共産青年同盟は戦前にあった団体です)。 戦前のものをメインに紹介してきた中で、なぜこれを取り上げたかというと、 戦旗社版『プロレタリア歌曲集』改訂増補版 と、取り上げられている歌やその順番など、内容が同じだからです。若干の表記のブレはあるものの、横に戦旗社版を置いて見ながら書き写したのであろうと思われます(たとえば「団結の力」の歌詞中で同じ平仮名で「すぱい」と表記されている)。 注目すべきは、戦旗社版の伏せ字の復活を試みている点です。 ただ、「赤旗の歌」の「来れ✕獄絞首台」は本来は「牢獄」ですが、「監獄」としているなど、間違いも見受けられます。 右が戦旗社版、左が日本青年共産同盟京都地方委員会版の「立毛押へに抗して」です。これは『日本の革命歌』でも伏せ字のままにしてありますが、こちらもこのように復活させてあります。果たして「✕✕隊」が「警察隊」で合っているのかは分かりませんが。 75年以上が経過しており、戦後すぐの劣悪な紙なのもあり、状態は極めて悪く、またホッチキスひとつのみで留められてあるために、表紙・裏表紙ともに外れてしまっています。 入手難易度に関しては分かりませんが、これ以外に1回だけ目にしたことがあります。ただ、日本青年共産同盟が出版した本自体が珍しいのは確かです。

続 全日本無産者芸術連盟編『プロレタリア歌曲集 第1輯』

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  謎の本(右のもの)を入手しました。 左の全日本無産者芸術連盟編の『プロレタリア歌曲集 第1輯』は 以前に紹介 しており、「稀覯本には違いなく、古書市場に出回ることはまずないと思われます」などと書きましたが、ほぼ同じものを見つけました。 「ほぼ同じ」ということは、つまり違いがあり、まずはカラーと白黒の差です。さらにサイズがカラー版は縦22.7cm×横15.0cm、白黒は縦22.4cm×横15.9cmと、白黒版の方が横に若干大きくなっています。また、表紙の「全日本無産者藝術聯盟編」の文字や、絵にも違いがみられます。そして、紙質や綴じ方にも違いがあります。 中身に関しては奥付など含め完全に同じになっています。 白黒版は一体なんなのでしょうか。 1928年当時に出された別刷りなのか、それとも後に出された復刻版なのか。 復刻版だとしても、紙の状態などからカラー版と同程度の年数を経ていると思われます。 幻の本であるが故に、言及した資料もあまりなく、解明には至っていません。