『社会主義者其ノ他ノ宣伝歌調』

 








埼玉県警察部高等課

『左翼右翼宣伝歌調』『禁止せられたる社会主義宣伝歌(自大正七年至昭和三年)』よりも古い1928年の発行と思われます。

警察が社会主義宣伝歌を集めたものはいくらか現存していますが、他のものとは違い、なぜか表紙が凝ってあります。更に、目次の次のページにはレーニンのイラストまでが描かれてあります。



あくまでも想像の域を出ませんが、当時の左翼がこの本を所有しており、当局の目を欺くために、警察がまとめた資料を装っている、とも考えられなくもありません。実際、私の所有する本の中には、表紙が普通の本で、ページをめくると共産党の冊子になっているというものもあります。

また、上の目次写真の38番「仝歌」の次から、新たに別のマル秘冊子が綴じられています。前半部分もそうですが、後半のこちらは、前半にも増して劣悪な紙が使われていて保存状態も極めて悪く、字もヘタで、判別しにくい事この上ありません。


「遠山」という印が押してありますが、他の情報は一切なく、来歴は不明です。こちらには目次頁がないため、曲目を転記しておきます。

「赤旗の歌」
「アナアキストの歌」
「ロシヤ革命歌」
「革命歌」
「革命歌」
「革命歌」
「革命歌」
「革命歌」
「農村革命の歌」
「革命安来節」
「革命歌」
「暁民の歌」
「借家人同盟行進歌」
「皇道大本宣伝歌」
「労働歌」
「革命歌」
「水平歌」
「ブチコハセ歌」
「メーデーの歌」
「示威の歌」

なぜこのラインナップに「皇道大本宣伝歌」が含まれるのかも不思議です。

この本に出てくる歌で注目すべきは、「革命歌(追憶の歌)」と題されているものです。
『左翼右翼宣伝歌調』に収録されている「新革命歌(ニ)」がほとんどこれと同じです。これは『日本の革命歌』には「ギロチンの歌ー幸徳を弔う革命歌ー」として転載されていますが、「ギロチン」という言葉は歌詞の中になく、どこから付けたタイトルなのか明記されていません。
一方、この『社会主義者其ノ他ノ宣伝歌調』の「革命歌(追憶の歌)」の中に「ギロチン」という言葉が出てきます。その点で貴重な発見と言えます。また、「市ヶ谷台上秋立ちて」といった部分もこちらでしか見られません。


禁止年月日も「革命歌(追憶の歌)」は大正12年3月3日で、「新革命歌(二)」は大正11年8月14日、大正12年1月22日と違っており、別の歌として扱われていることが分かります。

また、「借家人同盟行進歌」に「右行進歌ハ大正十年二月大阪市ニ於ケル逸見直蔵主催ノ借家人同盟大令行列ヲ行フニ際シ散布セントシタルモノ」と追記されているのも、『左翼右翼宣伝歌調』にはない点です。

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