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『禁止歌抜粋(革命歌其他)』

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  東京地方裁判所検事局思想部寫 ・革命歌 ・赤旗(黒旗)の歌 ・テロリストの歌(虚無党の歌) ・工場の歌 ・労働歌〜解放社同人作 ・革命歌〜市沼三郎作 ・テロリストの歌 ・革命歌 ・露国革命歌〜荒畑勝三作 ・暁民の歌〜本多季麿作 ・革命の歌〜田所輝明作 ・ブチコワセ ・あゝ我が愛する同胞よ 「極秘」と書かれた、粗末な藁半紙をホチキスでとめただけの資料です。発行年は不明ですが、「赤旗(黒旗)の歌」の禁止年月日が大正12年7月30日となっていて、これが最も新しい日付のため、1923年頃のものの可能性があります。 特に目新しい歌は載っていませんが、 『禁止せられたる社会主義宣伝歌(自大正七年至昭和三年)』 や 『社会主義者其ノ他ノ宣伝歌調』 と違い、作者の名前が書かれているのが特徴です。 「暁民の歌」について『日本の革命歌』では「作詞は田所輝明であろうといわれている」と書かれてありますが、ここでは本多季麿作となっています。ただ、当時の資料はかなりいい加減で、これをそのまま鵜呑みには出来ません。かといって、100年以上前のことなので、いまさら確かめる術もありませんが。本多季麿については、私は全く知りませんでしたが、その生涯を紹介している興味深いサイトがありました。→ 南方熊楠とも交流のあった謎の社会運動家?本多季麿 「革命歌(革命今や近つけり)」の作者も、『日本の革命歌』では不詳となっており、市沼三郎というのは新たな発見です。この人物については何も分かりません。

『社会主義者其ノ他ノ宣伝歌調』

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  埼玉県警察部高等課 『左翼右翼宣伝歌調』 や 『禁止せられたる社会主義宣伝歌(自大正七年至昭和三年)』 よりも古い1928年の発行と思われます。 警察が社会主義宣伝歌を集めたものはいくらか現存していますが、他のものとは違い、なぜか表紙が凝ってあります。更に、目次の次のページにはレーニンのイラストまでが描かれてあります。 あくまでも想像の域を出ませんが、当時の左翼がこの本を所有しており、当局の目を欺くために、警察がまとめた資料を装っている、とも考えられなくもありません。実際、私の所有する本の中には、表紙が普通の本で、ページをめくると共産党の冊子になっているというものもあります。 また、上の目次写真の38番「仝歌」の次から、新たに別のマル秘冊子が綴じられています。前半部分もそうですが、後半のこちらは、前半にも増して劣悪な紙が使われていて保存状態も極めて悪く、字もヘタで、判別しにくい事この上ありません。 「遠山」という印が押してありますが、他の情報は一切なく、来歴は不明です。こちらには目次頁がないため、曲目を転記しておきます。 「赤旗の歌」 「アナアキストの歌」 「ロシヤ革命歌」 「革命歌」 「革命歌」 「革命歌」 「革命歌」 「革命歌」 「農村革命の歌」 「革命安来節」 「革命歌」 「暁民の歌」 「借家人同盟行進歌」 「皇道大本宣伝歌」 「労働歌」 「革命歌」 「水平歌」 「ブチコハセ歌」 「メーデーの歌」 「示威の歌」 なぜこのラインナップに「皇道大本宣伝歌」が含まれるのかも不思議です。 この本に出てくる歌で注目すべきは、「革命歌(追憶の歌)」と題されているものです。 『左翼右翼宣伝歌調』に収録されている「新革命歌(ニ)」がほとんどこれと同じです。これは『日本の革命歌』には「ギロチンの歌ー幸徳を弔う革命歌ー」として転載されていますが、「ギロチン」という言葉は歌詞の中になく、どこから付けたタイトルなのか明記されていません。 一方、この『社会主義者其ノ他ノ宣伝歌調』の「革命歌(追憶の歌)」の中に「ギロチン」という言葉が出てきます。その点で貴重な発見と言えます。また、「市ヶ谷台上秋立ちて」といった部分もこちらでしか見られません。 禁止年月日も「革命歌(追憶の歌)」は大正12年3月3日で、「新革命歌(二)」は大正11年8月14日、大正12年1月22日と違っており、...

『禁止せられたる社会主義宣伝歌(自大正七年至昭和三年)』

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  特別高等警察資料 第六集 昭和5年1月24日発刊 特高警察が社会主義宣伝歌を収集した 『左翼右翼宣伝歌調』 と同様のものですが、こちらは2年遡った大正2年からのものです。『左翼右翼宣伝歌調』はしっかりと製本された「本」ですが、これは藁半紙を束ねてホチキスで留めただけです。そのために最終頁が欠落していて、これがとても残念です。 書き加えられた情報によると、沖縄県特別高等警察課から、知事・警察部長・検事正・那覇地方裁判所長・沖縄連隊区司令官・県下各警察署長という、当時の主な当局のもとに発送されていることが分かります。 曲目は以下の通りです。 (下線) は歌い出し部分です。 ・革命歌 (嗚呼革命は近けり 起てよ白屋襤褸の児) ・露国革命歌 (アジアに続く北欧の) ・解放歌 (模範工場の温情主義) ・デモクラシーの歌 (乃公は乃公だが世間の人は) ・労働歌 (貪婪飽くなき資本家の) ・暁民の歌 (我等は暁民自由の子) ・革命行進歌 (革命今や近づけり 見よ北欧に西欧に) ・借家人同盟行進歌 (昔丹波の大江山) ・歌 (我等は許さず人類の 自由を無視する虐政を) ・歌(ワシントンの譜) (吾等何時まで屈せんや) ・散会の歌 (1〜3略 暴には暴を以てせよ) ・散会の歌 (見よ官憲の圧迫を) ・革命デカンショ節 (学問する身と革命党は) ・革命歌 (泣いて別れた学の友よ) ・歌 (反逆の血を身に受けて) ・新革命歌(一) (噫革命は近づいた 愈々時は) ・新革命歌(二) (噫我愛する同胞よ 伝統茲に三千年) ・水平歌 (あゝ千年の古きより) ・鐘ヶ淵紡績女工の歌 (あれ見よあれ見よたらり) ・歌 (暴力禁制の此大御代に) ・農村革命歌 (無智と笑はれさげすまれ) ・革命歌 (赤旗一度破れては) ・労働歌 (白虹天を貫きて) ・労働歌Ⅰ (行こうか工場へ もどろか寄宿) ・労働歌Ⅱ (どんらんあくなき資本家の) ・水平歌 (嗚呼解放の旗高く) ・ぶちこわせ (いざやっつけろ喰ひつけ) ・赤旗の歌 (民衆の旗赤旗は) ・革命安来節 (春が来ようが冬寒かろうが) ・歌 (世は文明に進めども) ・深しみの深き日よ(ママ。実際は「悲しみの深き日よ」) (東雲のあけぬまに) ・インターナショナルの歌 (起て呪咀を烙す) ・京浜地方大震災 (ひとつしんぱんこのたびは) ・吾党の唄...

『左翼右翼宣傳歌調』

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  内務省警保局図書課が1934年4月にマル秘で発行をした本。大正9年から昭和8年12月末までの間に内務省が収集した宣伝歌を、「禁止-左翼」「禁止-右翼」「禁止相当ノモノ」「不問」に分けて歌詞を載せています。 革命歌の研究に欠かせない『日本の革命歌』(西尾治郎平・矢沢保編 一声社 1974年)も、これを大幅に参考にして書かれています。 また、『特高警察関係資料集成 第20巻』として復刻もされています。こちらは「米軍没収資料マイクロ・フィルム OJ34(R.2)」をもとにしています。復刻はモノクロでされましたが、実際の現物は、上の写真のように「禁止-左翼」は赤、「禁止相当ノモノ」は緑、というように色紙が使われています。 『日本の革命歌』の編者が、革命歌の歴史を綴った『自由と革命の歌ごえ』(矢沢保著 新日本出版社 1978年)には、「アメリカの国会図書館にしかない内務省の禁止歌リスト「左翼・右翼宣伝歌調」を、あるルートで入手した」とありますが、私の所有しているもの以外にも、国内のいくつかの大学図書館に所蔵されています。

『労働歌及組合歌』

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  昭和2年5月31日印刷 発行所 白揚社 定価 25銭 戦前に出た革命・労働歌集の中で最も出回っていて、入手は容易です。なぜこんなに現存しているのか不思議です。 現に私も2冊所有しています。 ただ、そのどちらも1曲目の「インタナショナルの歌」のページが破り取られています。たまたまなのか、なんらかの理由があるのか謎です。 序の附記に、「検閲の関係上、数多の伏字をした上有能な歌を多く削除」とありますが、国立国会図書館には、その検閲の際に内務省の担当者が書き込みをした、有能な歌がそのまま掲載されている1冊が所蔵されています。当時の検閲のリアルな姿が想像出来、一見の価値があります。

『労働歌及闘争歌』

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  昭和7年12月30日印刷 昭和8年1月7日発行 発行所 白揚社 定価 30銭 「序」で触れられている 『労働歌及組合歌』 は入手が容易ですが、こちらは全く出回りません。手持ちのもの以外では、国立国会図書館に1冊があることしか把握しておりません。ほとんど幻の歌集といって良いでしょう。 1980年出版の『国立国会図書館所蔵 発禁図書目録 1945年以前』(国立国会図書館編集・発行 紀伊國屋書店総発売元)によると、昭和7年12月7日付で、安寧秩序妨害のために発売禁止になっています。 印刷前に発売禁止になっているために、現存数が少ないのかもしれません。現品もアンカット(ページが裁断されていない)なので、読者の手に渡ったとも考えにくいです。 『日本の革命歌』では「けむり」について、作者不明としてありますが、大塚龍彦作詩、年田節造作曲と確認出来ます。